飯無しでいくの?

「きよっさん」というアダ名の同級生がおりました。由来は簡単です。丸々とした体型で苗字が山下だったからです。中学生の考えることなんてそんなものです。
きよっさんはその体型に相応しい食欲の持ち主でありました。彼の弁当箱は他の生徒のものとは明らかに違うものでした。恐らく普通のものの2倍ほどあったかと思います。毎日彼は昼休みが始まるや否やカバンから弁当箱を取り出します。ちなみに中・高の6年間を通して彼の動いているところはこの時間を除いて見ることは出来ませんでした。
きよっさんはボクたちの2倍近い量にも拘らず、誰よりも早く平らげるのです。そのスピードは1500Mを12分掛けて走破する人間とは思えないものでした。早々に弁当箱をカバンに仕舞うきよっさん。しかし、そのあと彼が取った行動にボクは目を疑った。カバンからもう一つの弁当箱を取り出したのです。やっとボクらのものと同じくらいの大きさ。理解できない。まだ食うのか、お前は。
ボクは必死に自分に言い聞かせました、あれはデザートだと。あの弁当箱にはフルーツが並々と入っているに違いないんだと。甘いものは別腹なんだと。それがボクが正気を保つ唯一の手段でした。
弁当箱のフタを取るきよっさん。そこにはやはりフルーツが一面に、と思いきや・・・アレ!?色が黒い。ていうか、きよっさんまだハシ持ってる!
ボクが「きよっさん、そのフルーツ何?」と尋ねると「ん?」と首を傾げるきよっさん。ボクは不審に思い彼の元へ駆け寄ったのですが。



全部、肉だった。ありえねぇ。